西澤潤一先生

展開がはやすぎる。駅伝のあとにおでんを食って腹いっぱいになったところに、研究室の教授から電話があって、なにやら懇親会があるからこないか、とおっしゃるので、みんなでぞろぞろその会場に行ったところ、どうもブルジョワ階級の紳士たちが立食パーティーをしているような雰囲気であった。
うちらはまあ別に名刺も持っていなく、また、人脈形成など行う気も全くなかったので、おでんなどとは桁違いの豪華な料理を次々を食いまくっていた。
フルーツを取っているときだった。ふと、何気なく振り返ったところ、自分の目を疑った。
あの日本の技術者の権威、西澤潤一先生が目の前にいらっしゃるのだ。
来年度から東京の何とか大学の学長をやってくれるようにと、石原慎太郎都知事に依頼されたほどの人物であるぞ。
当然、話し掛けにいくわな。すると、すごく気さくな雰囲気でもって、まあそばでも食えや、と、そばを渡してくださった。ついでに研究室のみんなとお写真も撮っていただいた。俺、来週から超真面目に研究やろうと決意する。研究中に株なんか買わない。

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駅伝本番。自分は8分32秒で、研究室では3番手なのだが、それでも一区で40位になってしまった。N沢研の先輩は7分30秒で15位だった。ショック。
N沢研は優勝した。来年から自分はN沢研に配属なので、閉会式のときにあいさつしに行った。
すごく気さくな教授であったが、会話が進むにつれて、キミはマラソンのタイムはいくつなんだ、という話になった。
自分は一周8分32秒です、と答えた。
空気が凍りついた。N沢研の皆様の間に、こいつは使いものにならんぞ、という雰囲気が立ち込めた。
せめてあと20秒は縮めていただかないと、と誰かがおっしゃった。
最終的に助手さんが、「磨けば光る可能性はある」と結論をおだしになり、終わった。
だから明日から覚悟を決めて、毎日4キロ走ることにする。決意表明として、明日自分はバリカンで頭髪を丸刈りにする。長さを5ミリ以下に。